アリとキリギリスの話が最近よく思い浮かぶ。
夏の間に、せっせと貯蓄するアリと、かたやバイオリンだけ弾いてなにもせずにいるキリギリス。
冬になると明暗が分かれる。貯蓄してきたアリは、快適に過ごすことができ、なにもしてこなかったキリギリスは、凍死か餓死してしまう。
だれもが聞いたことのある有名な話。"努力するものは報われる" "働かぬもの食うべからず" というようなことが多分教訓だと思う。
私は、この話が苦手だった。というのも自分が完全にキリギリス側の人間だから。小さいときから「助けてくれないアリはひどい、アリは心が冷たくてキリギリスは体が冷たい」などと考えていた。けど、この考えは世間的には間違いなんだろうな…と、思い自信がなかった。今は本格的にキリギリスのように生きているので不安感が拭えない。
しかし、最近になって、この"勤勉に生きるのが正しい"という思想に反発し、改変して新たな物語まで作った、サマセットモームという作家がいることを知った。
この作家のアリとキリギリスは、アリを堅実な兄、キリギリスを享楽的に生きている浪費家な弟、という人間の兄弟に置き換えているらしい。
兄は弟の事を、ろくな晩年を送らないと思っていたが、弟は超お金持ちの老婦人と結婚し、大量の遺産を引き継ぐという話。
従来のアリとキリギリスとは真逆の話。夢がある。しかし、よく考えるとこの弟はコミュ力が高く行動力があった。
わたしはむしろ、人から嫌われてハブられることが多い。そして、その事をいつまでも引きずって外に出られなくなるような人間。…同じように生きることは不可能。
人を寄せ付ける魅力や、ずば抜けた能力がある人以外は、アリのように勤勉に暮らすのが生きやすさへの近道なのかもしれない。ここにきて"勤勉に生きるのが正しい"ことに納得した。
勤勉に生きていけるように、なりたい。